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最高裁判所第二小法廷 昭和43年(オ)451号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由第一点について。

およそ、約束手形の裏書人がその所持人から当該手形金の償還義務を免除されても、右手形の振出人が負担する右手形金の支払義務に影響を及ぼさないことは、手形法七七条一項四号、四七条一項の法意に徴して明らかである。このことは、右債務免除が強制和議の条件として定められた場合においても同様であり、和議法五七条、破産法三二六条二項の規定の適用によるものではない。

また、約束手形の振出人が当該手形上の債務を弁済したときは、右手形の裏書人の償還義務も消滅するのであるが(大審院大正一一年(オ)第七八〇号同年一一月二五日判決民集一巻六七四頁参照)、強制和議により右弁済前の時点にさかのぼつて右裏書人の償還義務のみが一部免除された場合には、右償還義務は、右振出人の弁済により、右弁済額から右免除された債務額を控除した残額について消滅するものというべきである。

原審の判断は、右と同旨の見解にもとづくものと解せられるのであつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原判決を正解しないか、またはその前提を欠くものであつて、採用することができない。

同第二点について。

本件和議債権の弁済充当につき民法四八九条の規定による法定充当をすべきものとした原審の判断は、正当であつて、原判決に所論の違法は存しない。論旨は、原審において上告人の主張しない事実を前提とし、または独自の見解にもとづいて原判決を非難するものであつて、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)

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